JR山手線の大塚駅で降りると、都電のふみきりのカンカンという音が聞こえてくる。近代的な駅ビルの脇には都電の停車場。レトロなデザインの車両を見ると昭和に戻ったかのようなノスタルジックな気持ちになる。
駅の南口側にはサンモール商店街。狭い路地には小さな飲食店や昔ながらの洋品店や床屋がある。地元で人気の天ぷら屋は店主が傘寿を越えているというから驚きだ。地域の飲食店を相手にした八百屋や魚屋では早朝からエプロン姿の客がの姿が見える。どら焼きが人気の老舗の和菓子屋はタレントのマツコ・デラックスの番組で取り上げられたらしく、週末になると狭い路地に観光客が溢れる。ここのあんバターどら焼きは絶品だ。サンモール商店街を抜けた先には天祖神社と大塚記念湯がある。事務所は神社の真裏なのだが、朝早くから柏手を打つ音が聞こえてくる。大塚記念湯は昨今のサウナブームのせいか、若い人たちで賑わっている。シャンプー類が置かれているので気軽に行けるのもいい。
インド・ネパール・ベトナム・バングラディッシュなどのエスニックな店が増えてきたからか、様々なスパイスの匂いが食欲をそそる。ハラルの店も何軒もあり、全体的に古いビルが立ち並ぶ雑多な商店街にアジアの言葉が飛び交い、どこの国かわからなくなる時もある。
反対側の北口に出ると「ba」と書かれたビルが目につく。北口側は繁華街で、屈指の風俗街だった名残のディープな雰囲気を漂わせているのだが、星野リゾート誘致から始まった「ba」再開発プロジェクトにより、少しづつ洗練されたイメージになりつつある。
とはいえ、明るいうちから客引きの若い女の子たちがあちらこちらに並んでいるので、せっかくのおしゃれなカフェもどこか怪しげに見えてしまう。その先には夜になるときらびやかな電飾でレトロな店構えがひときわ目立つ大塚のれん街。古民家を飲食店として再生した、若者に人気のスポットだ。ここも「ba」の一環らしい。
「再開発が先か、店じまいが先か」
先の天ぷら屋の店主が寂しそうに語ってくれた。
大塚の魅力は新しさと古さ、そして猥雑さが入り混じったところだと私は思う。
都会的なビルとレトロな一角、
ちょっと危ない香りのする繁華街、
今も残る昭和の街角・・
さまざまな顔が同居するとても魅力ある街である。
このまま若干怪しい街のままでいてほしいとも思っている。